マダニは1年を通して活発に活動しています
マダニの発生には温度や湿度など様々な要因が複雑に関与しています。一般にマダニの活動季節は春から夏といわれています。実際、よく研究されていて全国的に広く分布し、重篤な病気を媒介するフタトゲチマダニは、春に活動を開始し夏には成ダニの数が最も多くなります。秋にはこれらが生んだ卵がかえるので幼ダニが多くなります。冬季は冬眠し、春にはまた活動を再開します。しかし、地域やマダニの種類によっては冬季にも寄生が認められるものもいます。
ダニがついてくるのは草むら
屋外の草むらなどには、幼ダニ、若ダニ、成ダニの3段階のマダニがいます。これらは草に登り、葉っぱの先端で犬や猫などの動物を待ちます。そして動物が近くを通過したときに付着し、皮膚へたどり着くと吸血を開始します。マダニは動物からの熱、振動、二酸化炭素を検出する独特な感覚器官によって動物を探します。幼ダニと、若ダニは3〜5日間ほど吸血し、宿主から離れて地上に落ち脱皮します。成ダニも1週間ほど宿主の血を吸い、交尾して地上に降ります。メスダニは何千個もの卵を生みます。
右は草の葉先について動物を待っているマダニ
マダニの吸血
マダニは動物の体の上で、皮膚が薄く付着と吸血が容易な場所を探します。通常は頭や耳などが多いです。次にのこぎりのようなクチバシを皮膚にさしこみ、セメントのような物質を分泌しクチバシを皮膚に固定します。次に、吸血と唾液の分泌を繰り返しますが、これにより周囲の組織が破壊されます。最初はゆるやかな吸血、その後は急速な吸血を行います。
マダニが引き起こす直接的な病害
1.貧血
マダニは寄生期間中に、吸血前の体重の100倍もの血液を吸うので、大量に寄生を受けた場合には貧血が見られます。
2.皮膚の細菌感染
皮膚に寄生したマダニを犬が除去しようとして掻いたときにできる傷に、細菌が感染する事があります。
3.アレルギー
ダニは吸血する時に動物対内に唾液を注入します。これによって動物がアレルギー状態になる事があります。
マダニが媒介する病気
1.バベシア症
犬などの赤血球に寄生する原虫。感染したマダニが動物の血を吸うときに、動物の体内に唾液を注入する事により感染します。本州以西に広く分布し、特に山間部に多く見られます。貧血、発熱、食欲不振などを起こし、急性例では死亡する事もあります。
2.ライム病
ボレリアという菌を、マダニが血を吸うときに犬などにうつします。発熱、全身性の痙攣、起立不能、歩行異常や神経過敏などの症状がみられます。人間にも感染します。
3.その他
Q熱、ヘパトゾーン症、野兎病、日本赤斑熱、ダニ媒介性脳炎などの病気も媒介します。
ネコのマダニについて
猫はグルーミング行動のため、犬と比べて寄生が多くありません。
猫のマダニ媒介性疾患は以下のようなものが認められています。
猫ヘモバルトネラ症:リケッチアの感染により貧血、元気消失、体重減少、食欲不振などの症状を現す。
Q熱:リケッチアによって起こる人畜共通伝染病で、猫や犬ではほとんどが無症状。汚染された塵や食品(乳製品)から感染するが、まれにダニも本疾患を媒介する。
その他、猫のボレリア症、猫のヘパトゾーン症、猫のエリキア症などがあるが、日本では確認されていない。
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